まめちしきvol.29『ペストの流行がヴァニタス画を生んだ』

Cornelis Norbertus Gijsbrechts (1660–1683) 
Vanitas still life with flowers, skull

人生の半分も過ぎると、いろんな価値観が変わりませんか?
私は若い頃よりも花を見て感動することが増えました。
満月を見たり、素晴らしい演奏を聞いたり、一期一会の出会いに、感動と切なさを覚えることが増えました。

若いうちは、自分がこの世からいなくなるなんて考えたことなかった。世界は自分を中心に廻っていると本気で信じてました。

さて静物画シリーズも4回目になりますが、今日の話は「ヴァニタス」です。
ヴァニタスも静物画の一種類で、旧約聖書の一節のラテン語「vanitus,vanitatum (空しい、全ては空しい)」から来ているそうです。

今を盛る美しい花も、美しい音楽も、時事ニュースも、すべては時の流れと共に虚に返っていく。どんな美人もいずれは髑髏になる・・・そのようなモチーフが流行りました。17Cのヨーロッパで流行したペストとも無関係ではありません。人々にとって「死」は身近なものとなりました。

よく似た概念に「メメント・モリ (死を忘れるな)」というものがありますね。聞いたことがある方は多いと思います。メメント・モリは「全ての人にとって死は避けられないものである。だから限りある命をより良く生きろ。」というものです。一方、ヴァニタスは、メメント・モリも内包する概念であり、「全てのものはいつか無くなってしまう。美しい花も、音楽も、人生も・・・・儚い空しいものだ。」というものです。

(ライター晶)

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